Α Β Γ Δ Ε Ζ Η Θ Ι Κ Λ Μ Ν Ξ Ο Π Ρ Σ Τ Υ Φ Χ Ψ Ω
ギリシャ文字(表音文字): 「音」を表す記号です。基本の 24 文字を覚えれば、街中の看板や遺跡の文字も、パズルのように組み合わせて読むことができるようになります。今のアルファベットの原型となった、非常に合理的で親しみやすい仕組みです。
| 文字 | 英語 | ギリシャ語 | 日本語読み | 音(目安) | 覚え方・備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| Α α | Alpha /ˈælfə/ | Άλφα /ˈalfa/ | アルファ | ア | 英語の A と同じ |
| Β β | Beta /ˈbeɪtə/ | Βήτα /ˈvita/ | ベータ | ヴィ | 英語の V と同じ |
| Γ γ | Gamma /ˈɡæmə/ | Γάμμα /ˈɣama/ | ガンマ | ガ ※ 条件あり | 喉の奥の音 |
| Δ δ | Delta /ˈdɛltə/ | Δέλτα /ˈðelta/ | デルタ | ð (this の th) | 有声音の th |
| Ε ε | Epsilon /ˈɛpsɪlɒn/ | Έψιλον /ˈepsilon/ | エプシロン | エ | 英語の E と同じ |
| Ζ ζ | Zeta /ˈzeɪtə/ | Ζήτα /ˈzita/ | ゼータ | ゼ | 英語の Z と同じ |
| Η η | Eta /ˈeɪtə/ | Ήτα /ˈita/ | エータ | イ | [注] 形は H、音は「イ」 |
| Θ θ | Theta /ˈθeɪtə/ | Θήτα /ˈθita/ | シータ | θ (think の th) | 無声音の th |
| Ι ι | Iota /aɪˈoʊtə/ | Ιώτα /ˈjota/ | イオタ | イ | 英語の I と同じ |
| Κ κ | Kappa /ˈkæpə/ | Κάππα /ˈkapa/ | カッパ | カ | 英語の K と同じ |
| Λ λ | Lambda /ˈlæmdə/ | Λάμδα /ˈlamða/ | ラムダ | ラ | V の逆さま |
| Μ μ | Mu /mjuː/ | Μυ /mi/ | ミュー | ム | 英語の M と同じ |
| Ν ν | Nu /nuː/ | Νυ /ni/ | ニュー | ヌ | 英語の N と同じ。小文字は v に似ているが音は N。 |
| Ξ ξ | Xi /zaɪ/ /ksaɪ/ | Ξι /ksi/ | クサイ (クシー) | クス | 三本線 |
| Ο ο | Omicron /ˈɒmɪkrɒn/ | Όμικρον /ˈomikron/ | オミクロン | オ | 英語の O と同じ |
| Π π | Pi /paɪ/ | Πι /pi/ | パイ (ピー) | プ | 円周率の形 |
| Ρ ρ | Rho /roʊ/ | Ρο /ro/ | ロー | ラ(弾く R) | [注] 形は P、音は「R」。 |
| Σ σ | Sigma /ˈsɪɡmə/ | Σίγμα /ˈsiɣma/ | シグマ | ス | 横向きの M |
| Τ τ | Tau /taʊ/ | Ταυ /taf/ | タウ | タ | 英語の T と同じ |
| Υ υ | Upsilon /ˈʌpsɪlɒn/ | Ύψιλον /ˈipsilon/ | ウプシロン | イ | 形は Y、音は「イ」 |
| Φ φ | Phi /faɪ/ | Φι /fi/ | ファイ (フィー) | フィ | PH = F |
| Χ χ | Chi /kaɪ/ | Χι /çi/ or /xi/ | カイ (ヒー) | ハ(喉の摩擦音) | 形は英語の X。音は喉を鳴らすドイツ語「ch」。 |
| Ψ ψ | Psi /saɪ/ /psaɪ/ | Ψι /psi/ | プサイ (プシー) | プス | 三叉槍の形 |
| Ω ω | Omega /oʊˈmɛɡə/ | Ωμέγα /oˈmeɣa/ | オメガ | オー | 最後を飾る文字 |
▶ Γ(ガンマ)の音について
基本は「ガ」の音ですが、前に e や i の音が来ると、「ヤ行」に近い柔らかい音になります。
▶ Θ と Δ の違い
Θ:英語 think /θɪŋk/ の th /θ/(無声音)
Δ:英語 this /ðɪs/ の th /ð/(有声音)
▶ Ν νの音について
英語の N と同じ。小文字は v に似ているが音は N。※ 後ろの音によって「ング」っぽくなることがある。
▶ Ρ(ロー)のR音について
アメリカ英語 /roʊ/ では舌を奥に引く発音(引きこもった R)だが、 現代ギリシャ語 /ro/ では舌先を弾く「ラ」に近い音。
▶ Χ(カイ)の読み方と音について
この文字を日本で「カイ」と呼ぶのは、英語読みの /kaɪ/ が学術用語として定着したため。 英語の Character や Chaos の語源であり、伝統的に CH と綴られる。 現代ギリシャ語では、喉をこする「ハ」や「ヒ」に近い音 /çi/ で発音される。 形は X、綴りは CH、音は H、名前は カイ。
ギリシャ文字が「読める」ようになると?
これまで図形にしか見えなかったものが、「言葉」として読めるようになります。
▶ 実際に読んでみよう
- ΕΛΛΑΣ
- 分解:Ε(エ) Λ(ラ) Λ(ラ) Α(ア) Σ(ス)
読み:エラス /eˈlas/
意味:ギリシャの自国での呼び名。 - ΣΩΚΡΑΤΗΣ
- 分解:Σ(ス) Ω(オ) Κ(ク) Ρ(ラ) Α(ア) Τ(テ) Η(イ) Σ(ス)
読み:ソクラティス /soˈkratis/(一般にはソクラテス)
意味:哲学者ソクラテス。※ Η は「イ」と読むのが現代ギリシャ語の発音です。 - ΖΕΥΣ
- 分解:Ζ(ゼ) Ε(エ) Υ(イ) Σ(ス)
読み:ゼフス /zefs/(※ ΕΥ は「エフ」と発音)
意味:全知全能の神ゼウス。 - ΦΙΛΟΣΟΦΙΑ
- 分解:Φ(フ) Ι(イ) Λ(ラ) Ο(オ) Σ(ス) Ο(オ) Φ(フ) Ι(イ) Α(ア)
読み:フィロソフィア /filosoˈfia/
意味:哲学(Philosophy /fəˈlɑsəfi/)の語源。 - ΔΗΜΟΣ
- 分解:Δ(ð/ディ) Η(イ) Μ(ム) Ο(オ) Σ(ス)
読み:ディモス /ˈðimos/
意味:民衆(デモクラシーの語源)。※ Δ は英語 this の th の音です。 - ΧΑΙΡΕ
- 分解:Χ(ハ ※ 喉をこする音) Α(ア) Ι(イ) Ρ(ラ) Ε(エ)
読み:ヘレ /ˈxere/(※ Ρ は軽く弾く音)
意味:出会った時の挨拶。※ 「ΑΙ」はセットで「エ」と発音します。
「ギリシャ」と「エラス」の不思議な関係
私たちはギリシャを「ギリシャ」、英語では「Greece /ɡris/(グリース)」と呼びますが、現地の人々は自分たちの国を ΕΛΛΑΣ(エラス) と呼びます。
これは、日本人が自国を「ジャパン」ではなく「日本」と呼ぶのと同じ関係です。
「ギリシャ」という呼び名は、古代ローマ人が一部の部族名をもとに呼んだことに由来します。一方で「エラス」は、彼らが伝説の祖先ヘレンの子孫であるという意識とともに受け継がれてきた自称です。
古代の地中海を旅する「パスポート」
ギリシャ文字を覚えることは、単に一つの国の文字を知ることではありません。
古代においてギリシャ語(コイネー・ギリシャ語)は、地中海世界で広く使われた共通語でした。 そのため、ギリシャ国内だけでなく、イタリア南部の遺跡、トルコの図書館、エジプトの石碑など、さまざまな場所に同じ文字が刻まれています。
2000 年以上前の世界において、ギリシャ語は広い地域で通じる言語のひとつでした。あなたが覚えた 24 文字は、古代の世界を読み解くための小さな「鍵」になります。
現代にも残るギリシャ文字
現代でも、星の名前(α 星)、理科の用語、数学の記号など、私たちの身の回りにはギリシャ文字が数多く使われています。
「あ、この文字読める!」という小さな発見が、日常や旅の中での楽しみになります。
